じめまして!飲食店の創業補助金に強いコンサルタントの水野です。
飲食店を開業するためには物件取得費、内装工事、厨房機器などの初期投資に運転資金を含め、開業資金で1,000万以上かかると言われています。開業資金の調達方法としては、自己資金+金融機関からの借入で用意する方がほとんどである思います。
しかしながら、資金調達については、もう1つ方法があります。それは、国や地方自治体から支給される助成金・補助金を受けることです。助成金・補助金は借入とは違い、返済義務のない、「もらえるお金」です。この助成金・補助金は国・地方自治体の予算を財源としていますから、そのタイミングで使える助成金・補助金も変わってきます。
現在、飲食店の開業者にとって必ずご活用頂きたいのが、H25年から始まった「創業補助金」と呼ばれる補助金です。創業補助金は新たに創業した個人または法人に対し、国から最大で200万のお金がもらえる制度です。
飲食店の場合、創業補助金が活用しやすい下記の理由があります。他の業種と異なり、通常の店舗で発生する経費だけで簡単に補助対象経費の上限額の300万円を超えるため、200万円満額を簡単にもらえてしまうのです。
- ①内装工事や厨房機器などの初期費用も補助対象経費となるため、内装工事や厨房機器を補助対象経費に計上できれば、簡単に上限の300万円を超えること
- ②上記①のように内装工事や厨房機器などの初期費用を補助対象経費に計上できなくても、家賃と人件費が補助対象経費に含めることができるため、ほとんどの方、家賃と人件費の支払いのみで、上限の300万円を超えること
しかしながら、この創業補助金は全員がもらえるわけではなく、認定支援機関と一緒に事業計画書を作成して、国の方で応募者の事業計画を事業コンセプトの独創性や実現性などの目線で審査、優秀な応募者のみ採択されます。「もらえるお金」のため、年々、応募者の数が増加してきており、審査が厳しくなってきています。
私は、飲食店の創業補助金の申請を数多く支援してきました。創業補助金で採択されるためには「コツ」があります。かく言う、私も、創業補助金の開始当初の採択率は散々な結果に終わりお客様にご迷惑をかけてしまいました。しかし、その後、研究を重ね、今では一般平均採択率の2倍以上の採択率を保持できています。
これから、私が実際に創業補助金の事業計画書の作成支援する際に重視しているポイントや採択後の手続きで事故になりやすい気をつけなければならないポイントなどを記載していきたいと思います。これから飲食店の開業しようと方にとって少しでもお役に立てれば幸いです。
創業補助金とは
新たな需要を創造する新商品・サービスを提供する創業者や②事業承継を契機に既存事業を廃止し、新分野に挑戦する等の第二創業を支援する制度として、認定支援機関である専門家または金融機関と一緒に事業計画書(創業計画書)を作って申し込めば最大で200万円まで補助金がもらえるという制度です。
対象となる方
平成28年度の創業補助金について、2月15日に中小企業庁から募集要件について公表されました。公表されている応募要件として、大きく下記の3点が上げられています。昨年との大きな違いは、認定支援機関による支援は応募要件から外され、創業予定の認定市区町村又は当該認定市区町村の認定連携創業支援事業者による支援が必須要件となったことです。
応募要件①
新創業の場合は、募集開始日~補助事業終了日の間に創業予定の方。つまり、4月初旬以降に創業予定の方が対象となります。
応募要件②
産業競争力強化法に基づく認定市区町村で創業していることが必要となります。なお、認定市区町村とは、産業競争力強化法に基づく認定市区町村産業競争力強化法では、市区町村を中心とした創業支援事業の取組みが促進されるよう市区町村において創業支援事業に関する計画を作成し、この計画を国が認定、支援するという仕組みになっております。計画の認定を受けた認定市区町村では、商工会・商工会議所や金融機関等と連携し、当該地域の創業者・創業希望者の支援を行っています。
応募要件③
創業予定の認定市区町村又は当該認定市区町村の認定連携創業支援事業者による特定創業支援事業を受けることが必要となります。支援を受けた、又は受ける予定であることを証明する書類が創業補助金の応募時に必要となります。
補助金額
補助率 | 補助対象経費の3分の2まで |
---|---|
補助金額 | 100万円以上200万円以内 |
例えば、使った経費が210万円だったとしたら、補助率は210万円×3分の2=140万円となります。補助金額の範囲内なので全額受けることができます。
使った経費が450万円だったとしたら、補助率は450万円×3分の2=300万円となります。補助金額の上限200万円を超えてしまうので全額受けることはできず、200万円までとなります。
補助対象となるもの、ならないもの
対象外のものが意外と多くあるので、ご注意ください。また、対象となるのは補助対象期間(交付決定日から終了日までの期間)に発生&支払った経費が対象となります。なので補助対象経費であっても交付決定日前に支払った経費は対象外となりますので、ご注意ください。
項目 | 補助対象 | 補助対象外 |
---|---|---|
会社設立費用 | 司法書士や行政書士など専門家への報酬 | ・定款認証手数料 ・収入印紙代 |
設備資金 | ・事務所や店舗の内外装工事費 ・機械や工具器具備品費 |
・敷金保証金 ・車の購入代金 ・事業以外にも使えるPCやプリンタなど |
原材料 商品仕入 |
サンプル品制作のために必要な原材料 | サンプル品以外は全て対象外 |
外注費 委託費 |
・サンプル品の制作委託 ・経理事務の委託料 ・HP作成委託 ・事業計画実行のために支払った顧問料など専門家への報酬 |
・今回補助金申請あたり、事業計画作成のために支払った専門家への報酬 ・決算書作成、税務申告料 |
人件費 | ・従業員給与(月額35万円) ・アルバイト給与(日額8千円) ・従業員への賞与 |
・代表者および役員給与 ・社会保険料 ・通勤手当 |
旅費交通費 | 国内、海外の公共交通機関利用にかかった実費 | ・公共交通機関以外の利用にかかった実費(タクシー、レンタカーなど) ・必要以上のぜいたくな旅費(グリーン車、ビジネスクラス) |
賃借料 | ・事務所、駐車場の家賃 ・借入の際の仲介手数料 ・車両や備品のリース料 |
・礼金 ・補助金交付決定日以前に支払ったもの |
販路開拓にかかった経費 | ・広告宣伝費 ・市場調査や宣伝のために 支払った専門家への報酬 |
広告宣伝に使った切手代 |
消耗品 水道光熱費 通信費 |
全て対象外 | |
接待交際費 会議費 |
全て対象外 |
創業補助金を申し込むにあたっての注意点
補助金=タダでもらえるお金、という印象がとても強いため、多くの人がついつい勘違いしがちな点を3つ詳しく説明しておきます。
1.補助金は後払いであること
創業補助金としてお金がもらえるのは交付決定があってから、約1年後となります。それまでは、自己資金や創業融資などでお金を用意し、自力で事業を回す必要があります。特に創業時の事業計画の策定においては助成金の取得を前提にしてはいけない、ということが重要です。助成金は開業後の資金繰りを優位に進めるためのプラスアルファの要素として捉え、事業計画では助成金がなくても資金不足に陥らないモデルを組み立てる必要があります。
また、「1年後に戻ってくるお金だから」といって、必要以上のお金を強気に使ってしまうとその1年すらもたずに預金残高ゼロ=資金ショート=倒産という可能性もあります。
よくあるのが、補助金上限の200万円までめいいっぱいもらおうとして、経費を無理やり積み増しするケースです。例えば、机に座っているだけの無駄な従業員を雇ったり、不必要な業務を専門家に委託して無理やり経費を積み増しする場合です。本来の売上、事業規模に合わない多額の経費支出となりますので、当然、資金繰りが厳しくなってしまいす。
資金繰りが厳しくなってしまい、このために借金をする方もいます。借金をして回れば良い方で、借金できない方は資金繰りが回らず、補助対象の経費にお金を使うことができなくなるため、採択された創業補助金を途中で断念せざるをえません。事業に必要な資金まで足りなくなれば最悪、創業補助金のせいで創業に失敗=倒産するというおかしなことにもなりかねません。
運よく1年後に補助金上限いっぱいのお金が戻ってきたとしても、無駄に使ったお金が会社に戻ってきただけです。会社にとってプラスになったことは何も無く、結局、おいしい思いをしたのはダメな従業員と専門家だけということがないようにしてください。
2.補助金対象期間は交付決定後、1年間のみであること
創業補助金が採択され、「1年後に戻ってくるお金だから」といって、ちょっとぜいたくをして、家賃が高めで広めの店舗を借りたり、従業員を多めに雇ったりしたとします。創業補助金をもらった1年目はよいですが、2年目以降は完全に自腹になります。
売上と利益が順調に伸びていれば問題ないですが、計画通りにいかない場合、毎月毎月大きな負担だけが残ることになります。売上見込みが計画通りに行くことはほとんどありません。
また、創業補助金は専門家への報酬にも使えるということで、販促活動を最初から専門家やコンサルに丸投げしたとします。2年目以降、業績が伸びず、専門家やコンサルにも報酬を払えないとなると、販促活動をゼロから自力でやり直しとなります。お金にも気持ちにも余裕がない、創業補助金をもらえなかった場合よりもはるかに厳しい状態となります。
補助対象期間は1年で終わりですが、会社はその後も続きます。変に強気になって無駄な経費を使わないように気をつけましょう!外部の専門家やコンサルを入れるにしても、丸投げではなく、販促活動の助言をしてもらうなど、先のことも考えて判断する必要があります。
3.補助金をもらうことが目的ではないこと
最後に一番忘れてほしくないのが、「補助金をもらうことが目的ではない」ということです。創業しようと思っていた時期にたまたま創業補助金の募集があり、そして補助金の交付決定を受けることができた、というのであれば理想的で、何の問題もありません。
逆に、創業補助金の募集が始まるまで創業のタイミングを遅らせる、という場合、それが本当に事業にとってプラスなのかどうか、考える必要があります。
・創業補助金の募集を待っていたために、12月(忘年シーズン)、3月(歓送迎会シーズン)といった稼ぎ時を逃し、苦しいスタートとなった
・立地の良い店舗を見つけたけど、内外装工事費用を創業補助金でまかなうため、募集を待っていたら他の人に取られた
・さんざん待ってようやく申し込んでみたけれど、結局、採択さしてもらえなかった。または、創業補助金の募集がなかった
このように、創業補助金をもらうことに一生懸命で、事業の方はさっぱり、というのでは本末転倒です。
創業補助金の採択後の手続きの流れと注意点
創業補助金の採択後の大まかな流れとしては、以下のようになります。
1.交付申請書を提出し、補助対象経費の上限額を確定させる
創業補助金の事務局へ交付申請書を提出します。この交付申請により補助対象経費および補助金の上限額が確定します。書類に不備がなければ、事務局から交付決定通知書が送付されてきます。この交付決定日から補助対象対象期間がスタートとなります。
この交付申請書自体はあまり複雑なものではありませんが、申請書に屋号が漏れていたり、補助対象経費の金額の根拠が不明確だった場合、事務局からの差戻しが発生します。ここで差戻しが発生するケースが非常に多いです。ここで時間が掛かってしまうと、その分だけ補助対象期間が短くなってしまうので、要注意です!
2.補助対象期間中に保持対象経費の証拠書類をしっかりと保管する
交付決定日~補助対象期間(平成27年11月15日まで)の間に支出した補助対象経費(人件費、店舗借入費など)の必要書類を整理・保管する必要があります。この必要書類の保管で何と言っても事故になりやすいのが、支払実績のエビデンスです。現金払、銀行振込、口座振替、クレジットカード支払のそれぞれの支払方法によって保管しなければならない必要書類が変わってきますので要注意です。その中でも注意が必要なのは銀行振込の場合です。
銀行振込の場合は、下記の2つが必要ですが、銀行振込受領書等について失念するケースが非常に多く発生しています。通帳については検査報告書作成時にでも取得できますが、銀行振込受領書等については検査報告書作成時に取得できないケースの方が多く、この点について検査報告時に問題となることが多く発生しています。
(1)銀行振込受領書等
銀行振込受領書、銀行利用明細書、インターネットバンキングによる振込を証明できるものを印刷したもの等。支払の事実(支払の相手方、支払日、支払額等)を明確にしてください。
(2)通帳のコピー
表紙、口座名義が印字されているページ、支払該当部分のコピー3種類
3.事業完了報告書を作成し、補助対象経費を確定させる
補助対象期間の終了後に事業完了報告書を作成し事務局へ提出する必要があります。この書類を事務局側で審査し、検査面談を行います。検査面談&審査に合格すれば補助金額の確定通知が送付されます。最後に、補助金の交付請求を行い補助金200万円(補助対象経費が300万円以上の場合)が交付されます。
※この他にも計画変更等の手続きがあった場合に別の報告が必要となりますので、詳細は「補助金事務取扱説明書」にてご確認されることをお薦めいたします。
以上のように、この創業補助金は採択されてからも、やるべきことが非常に多く、ミスによるトラブルが多く発生していますので、採択された後も注意が必要です!