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コラム

COLUMN
2021.08.16

支払調書って発行しなければいけないの?

毎年、年が明けて確定申告の期限が近づいてくると「支払調書」という言葉が飛び交います。この時期は飲食店のオーナーのもとにもこの支払調書の発行依頼があり、どうすれば良いのか相談を受けることが多くあります。

今回は支払調書について解説していきます。

支払調書とは

企業や個人事業主は、個人(いわゆるフリーランスの人)のうち、一定の職種に該当する人に対して報酬を支払った場合、支払時にあらかじめ所得税を源泉徴収(天引き)して、源泉徴収した所得税を個人に代わって税務署に支払う義務があります。

飲食業に関係のある一定の職種とは例えば弁護士・税理士・社会保険労務士のいわゆる士業に対する支払いやロゴや販促物のデザインをしてもらったデザイナー、店舗や商品の写真撮影をしてくれたカメラマンなどが考えられます。

ポイントは「個人」に対する支払いに対して源泉徴収が必要になる点です。一定の職種に該当する場合でも法人に対する支払いについては源泉徴収の必要はありません。

そして、翌年1月に個人に支払った報酬等を集計して「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を発行し、税務署へ提出することが義務付けられています。これを一般に「支払調書」と呼んでいます。

 個人は税金をきちんと申告するか怪しいので、支払う企業や個人事業主に予め税金を天引きして納付させるだけでなく、支払調書によりいくら支払ったという情報を支払う側から税務署へ報告させることで、税務署は報酬を受け取る個人がきちんと確定申告をしているかどうかをチェックしているのです。

支払調書についてのよくある誤解

確定申告の時期に個人の取引先から「支払調書を発行してほしい」と依頼がくることがあります。個人の取引先も報酬の支払者は支払調書の発行義務があると思っている方が多くいるためです。

しかし、実はここに大きな誤解があります。

報酬の支払者である企業や個人事業主は支払調書を税務署のみに提出すればよく、個人の取引先への支払調書の発行義務はありません。

また、確定申告書の提出の際に支払調書の添付が必要だと勘違いしている方も多いのですが、そんなことはありません。所得税法上、確定申告書に支払調書の添付義務は定められておらず、そもそも報酬をもらう側の個人は自分で売上等を記録した帳簿を作成する必要があるため支払調書がなくても確定申告を完結させることができます。

大手通販サイトのAmazonも2013年分の報酬から支払調書の発行をやめています(Amazonからアフィリエイト収入を受けている人は一定の職種に該当し源泉徴収の対象となります)。

Amazonが公表したQ&Aがこれまでの誤解と慣習を吹き飛ばす素晴らしいものであったので紹介します。

FAQ(よくあるご質問)

(1)支払調書の交付は、支払者の義務ではないのですか?

答: 支払調書の提出について所得税法が義務付けているのは支払者の所轄税務署への提出のみに限られております。アソシエイト・プログラム参加者様への送付は法律上義務づけられておりません。(所得税法第225条)

(2)これまで支払調書を確定申告書に添付していました。今後、送付していただけないとしたら、確定申告書への添付はどのようにしたらよいのですか?

答: 支払調書は、確定申告書の添付書類として所得税法において提出が義務付けられている書類には該当しません。弊社より源泉徴収された金額はアソシエイトセントラルの支払履歴確認ページにてご確認頂けます。(所得税法第120条第3項)

(3)確定申告をしたところ、税務署より支払調書の添付を求められました。交付してもらえますか?

答: 確定申告書に添付が義務付けられている書類は所得税法第120条に列挙されており、支払調書は該当しません。

(1)と(2)については上記で解説した通りです。

(3)については今まで慣習として添付されていた支払調書の添付を義務だと勘違いした税務署職員がたまにいるようです。提出を求められた場合の対応について記載されています。もし売上の数字の根拠を確認したいというのであれば自身がつけている帳簿や発行した請求書を見せれば問題ありません。

まとめ

この時期によくあるお問い合わせである支払調書についての取扱いをまとめました。

たとえ報酬の支払先へ支払調書の発行は義務付けられていないとはいえ、取引の関係上いきなり発行をやめることは難しいケースもあると思いますが、極力無駄な仕事は省いていくことをおすすめします。

また、報酬の支払先の個人に対して源泉徴収が必要なのかどうか不明な場合は顧問税理士によく確認してみてください。たとえ請求書に源泉徴収税額の記載がなくても、実は源泉徴収が必要だったというケースもよくあります。

繰り返しになりますが、一定の個人に対して報酬を支払う場合の源泉徴収、納付の義務は報酬の支払い側にあります。知らないうちに税金の納付が漏れており、罰金まで支払わなければならないといったケースがよくあるため、注意が必要です。