飲食店の独立・開業希望の中でも、カフェ業態の人気は高く、「いつかはカフェオーナになりたい」「地元の人に愛されるカフェを経営したい」と考えている方は少なくありません。
しかし、カフェに限らず、飲食店を開業し、経営を続けていくことは想像以上に大変なことです。特に安定的な売上を確保するためには、競合との差別化を意識したコンセプト作りやメニュー開発など戦略をしっかり立てる必要があります。
こういった戦略作りの土台としてもらうべく、実際にここではカフェ開業に必要な資格や必要な資金などをまとめましたので、開業を考えている方はぜひ参考にしてみてください。
カフェ開業に必要な資格・届出
食品衛生責任者
カフェを開業するには、「食品衛生責任者」を置くことが義務付けられています。カフェだけに限らず飲食店の開業に必要な資格です。そして、保健所に営業許可の申請を出すときに必要な資格です。
資格は都道府県で実施されている講習会に参加すると取得できます。受講して話を聞くだけのため、試験や技術の実践などもなく、最短1日(合計6時間の講習)で取得できます。受講料は1万円。どの地域で開業しても同じ資格が通用するため、取得地域とは関係なく各地で使えます。ただし、事前予約が必要な講習です。定員も決まっており、地域によっては1~2ヶ月先まで予約が埋まっていることもあります。開業予定が近日中の方は早めに申し込みましょう。
防火管理者
カフェでは火やガスを扱う業務もあり、火災が起きることがあります。そこで、「火災の被害を抑える」・「火災の予防・対策する」ために開業で必要な資格が「防火管理者」です。
防火管理者は、必ず必要な資格なわけではなく、収容人数が30人を超える飲食店のみ義務付けられていることです。つまり、資格が必要な運営者は、それなりの規模のカフェを運営する場合だけとなります。
また、施設の面積によって講習時間が変わり、延べ300平方メートル以上の店舗として受ける「甲種講習」は2日(10時間)、延べ300平方メートル未満は1日(5時間)の講習です。甲種講習は7,500円、乙種講習が6,500円。面積がわからない段階ではどの講習をうけるか確定しないので、カフェ店舗の設計が決まった段階で受けるようにしましょう。
飲食店営業許可申請
カフェが飲食店として保健所に許可をもらうための届け出です。2~3週間の期間が必要になるため、店舗の工事を始める前に、まずは保健所に相談します。開店の3週間前には申請書類を用意し、保健所の検査を受けられるようにしましょう。
この許可申請がおりないとカフェの営業を始めることができません。申請の費用は約2万円です。申請に必要な食品衛生責任者手帳や見取り図なども事前に用意します。
菓子製造業許可申請(パンなどを提供する場合)
カフェの多くはパンのメニューを提供しています。特に自家製で提供する場合には、「菓子製造業許可申請」も取得しておくことが必要です。例えば、パン販売店に小さなカフェを併設する場合です。
個人事業の開業等届出書
個人事業主としてカフェ店舗を営む場合、「開業等届出書」を地域所管の税務署に提出する必要があります。審査などはなく、追加で「青色申告承認申請書」を出すと最大で65万円の控除が受けられる仕組みです。
ただし、「開業等届出書」は、開業から1ヶ月以内の提出が必要です。忙しい開店直後でも忘れないようにしましょう。顧問税理士がいる場合は、開業時に必要な税務署等への届け出は代行してもらえますので、確認してみるとよいでしょう。
カフェ開業時にあった方が良い免許や資格
調理師免許
カフェの開業にはあった方が良い資格として「調理師免許」が挙げられます。調理師がいれば食品衛生責任者を取得する講習が必要ないため、兼ねることができます。
また、取得しているとカフェであっても利用者の信頼感を得ることができます。店舗のどこかに「調理師免許」が作っていることを公表しておけば、食に対する安心感につながるでしょう。
栄養士免許
カフェでヘルシーメニューやドリンクを作る場合には、「栄養士免許」を取得しておくのも良いでしょう。栄養士は、栄養について助言する資格であり、店舗独自のメニューを考えて提供するときに、「栄養士免許」を持つ物が考えたメニューと示すことでプラスイメージとなります。
民間や団体の資格例
国家資格以外にも民間や団体の資格があります。特にカフェでは、コーヒーを出すお店が多いです。しかし、国家資格にはコーヒー関連のものはありません。
そこで、例えば日本スペシャルティコーヒー協会が養成している「コーヒーマイスター」の認定資格があります。他にも、日本安全食料料理協会の「JSFCA認定コーヒーソムリエ」、講習だけで取得可能な「J.C.Q.A認定コーヒーインストラクター3級」などもあります。
初心者向けや取得が簡単なものなど、それぞれに一長一短があるため十分に検討して取得を目指しましょう。
カフェ開業に必要な費用
物件取得費
店舗の敷地や建物・テナントを借りる際に必要な費用が「物件取得費」です。礼金や仲介手数料に保証金(住居などを借りる際の敷金に相当)を必要とします。費用相場は、礼金が家賃1~2ヶ月分、仲介手数料に家賃1ヶ月分、保証金は少し多めで家賃6~12ヶ月分、前家賃が2ヶ月分です。合計で家賃の10~15ヶ月分程度を見ておきましょう。
店舗内外装工事
カフェ開業に必要な費用の中で大きな割合を占めるのが「内外装工事費」です。外から見える看板や塗装などの外装に加え、店内のインテリアやデザインを決める重要な項目です。費用とおしゃれさを天秤にかけて予算の範囲で決めることになりますが、店舗コンセプトと合ったものにすることが最も大切です。あっという間に費用が膨らみますので、きちんと予算を設定し、内装会社とイメージをすり合わせておきましょう。
厨房機器費
カフェでどんなメニューを出すかによって変わるのが「厨房機器費」です。業務用のエスプレッソマシンやオーブン、電気フライヤーなどが必要です。そのうえで、基本的な機器として製氷機、冷凍冷蔵庫、食器洗浄器なども用意します。
内外装工事と厨房機器を合算して、スケルトン物件であれば1坪当たり60万円、居抜き物件であれば1坪当たり10~30万円を目安としておきましょう。
什器(食器類や備品)
営業した際にお客さんに出す食器類やPOSレジ、看板、消耗品など什器を用意する費用も必要です。費用は10坪の小規模店舗で30万円(食器が10万円くらい)、店前看板類が20万円、レジ・パソコン・タブレットが10万円ほどです。他にも開店後に不足を補っていく必要があるため、随時費用が発生します。
運転資金
カフェを続けるために仕入れや費用の拠出、給料の支払いなどをするための予備費が「運転資金」です。家賃や仕入、給与、水道光熱費など毎月かかる費用の3か月分は確保しておきましょう。
カフェ開業の種類
立地・物件の選び方としては、大きく3種類あります。それぞれ、良し悪しはありますが、カフェと一言でいっても、そのスタイルはさまざまです。どのような年齢層の、どのような職種の人たちに、どういった目的で利用してもらいたいかという、明確な店舗コンセプトを持つことが最も重要です。そのうえで、店舗コンセプトに合った立地・物件を検討する必要があります。
店舗型
最も一般的で、一番多いのが「店舗型」です。テナントを借りて新たに内装をセットして、カフェとして開店します。人通りの多い場所や、近くに人気店の多い都心立地に有名店が集まる傾向にあります。初期費用と運転資金の多さがデメリットとなるため、少しでも支出を抑える工夫が必要になります。
自宅型
店舗型に比べて、物件取得費がかからないのが「自宅型」です。さらに、自宅を使うことで家賃などの運転資金が店舗型よりも抑えられます。ただし、デメリットとして、集客力が弱いこと、立地を選べないことで一定以上の売上が見込めないこともありますので、入念な情報収集が必要となります。
移動型
店舗型や自宅型では、カフェの店舗を動かさずに運営しますが、「移動型」では、移動販売する車両(キッチンカー)でカフェのメニューを提供します。店舗にかかる費用が自宅型の家賃や改装費などの費用よりも安くなり、販売時の配置許可さえ取れれば営業が可能です。
一方で多くの従業員が働くことができないため、必然的に小規模販売となり、営業時間なども限られてくる、1箇所にとどまらない場合、常連客が付きにくいというデメリットがあります。そのため、集客するエリアの調査や、柔軟な営業日・時間の変更など行っていく必要があります。
まとめ
カフェ開業に必要な資格、あった方が良い資格は、取り扱うメニューや店舗の規模によって異なりますが、「食品衛生責任者」は早めに取得しておくことをお勧めします。
大切なことは、こういった情報を元に、どのようなカフェを開業するか、そのコンセプト明確にして、戦略を練り上げていくことです。そうすれば、必要な資格や届出も把握でき、準備が進めやすくなりますので、ぜひこの記事を参考に準備・検討を進めてみてください。