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コラム

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2021.10.05

飲食店の利益率は何%?原価率もあわせて解説!

飲食店に関わらず、事業の成果や儲けは「利益」として表します。「利益」が”0″より大きければ黒字、”0″より小さければ赤字となります。基本的には事業を行う以上、黒字であるべきですが、ではどの程度の利益が必要なのか、その相場について解説していきます。

これから開業される方も、既に飲食店を経営されている方も、相場を知っておくことは必要ですし、目安を知っておけば、目標設定も可能となりますので、是非頭に入れておいてください。

押さえておきたい3つの利益

実際に事業の成果として示される損益計算書を見ると「利益」は5つ存在します。その中でも重要なのは、①売上総利益(粗利益)②営業利益③経常利益の3つです。そしてそれぞれを売上高で割ったものを、売上総利益(粗利益)率、営業利益率、経常利益率と呼びます。それぞれの利益の意味について簡単に説明しておきます。

①売上総利益(粗利益) <売上総利益(粗利益)率>

売上総利益は、「売上高」から食材やドリンクなどの「売上原価」を差し引いて計算されます。売上総利益は粗利益と呼ばれることもあり、商品力によっていくら儲かったのかを表す利益であり、「商品の魅力によって利益を稼ぎ出す力」を把握することできます。

②営業利益<営業利益率>

営業利益は、売上総利益から人件費、家賃、水道光熱費などの「販売費および一般管理費」を差し引いて計算されます。主たる営業活動(本業)によって、いくら儲かったのかを表す利益であり、「お店の”運営”によって利益を稼ぎ出す力」を把握することができます。

③経常利益<経常利益率>

経常利益は、営業利益に常に発生する本業以外の収入(保険収入や賄い収入など)や支出(銀行への支払利息など)を加味して計算されます。経常利益は「けいつね」と呼ばれることもあり、経常(けいつね)は「平常なら」という意味です。つまり、経常利益は特別なことが起きないときの利益であり、「お店の”経営”によって利益を稼ぎ出す力」を把握することができます。

飲食店が目指すべき利益率は?

この3つの利益の中で、飲食店経営者が店舗の運営において目標とする必要があるのは「営業利益(営業利益率)」です。営業利益を上げるため、営業利益率を高めるために、どのようなことをすべきか考えていく必要があります。

飲食店のコスト構造を把握しましょう

飲食店で営業利益を上げられるかどうかは、売上に加え、飲食店の3大コストであるFLRコストをどれだけコントロールできるかに大きく左右されます。FLRコストとは、ドリンクなども含んだ材料費である原価(Food:フード)、人件費(Labor:レイバー)、家賃(Rent:レント)のことです。また、原価(F)+人件費(L)+家賃(R)を売上高で割ったものをFLR構成比率と呼びます。
このFLRコストと利益の関係を図にすると以下のように表現できます。
飲食店のFLRと利益構造
この図からわかる通り、売上高からFLRとその他経費を引いたものが営業利益です。
飲食店の運営を行う経営者は、売上高を伸ばすと同時に、FLRをコントロールして利益を生み出していくことになります。

目指すべき利益率は?

FLRコストをコントロールしていく中で、目指すべき営業利益率はどのぐらいでしょうか?
結論からいうと、一つの店舗単体で目指すべき営業利益率は15%、FLR構成比率は65%です。

一般的なFLR構成比率としては原価 (F):30%、人件費(L):25%、家賃(R):10%の合計65%ですが、高原価の立ち食いステーキの業態のように原価(F):50%であっても、立ち食い&シンプルなオペレーションにすることで、席の回転率と生産性を高め、売上を増やし、人件費(L):10%、家賃(R):5%に抑え、合計65%にするという方法もあります。

また、家賃(R)が5%になるような2等立地戦略を基準とし、その分、原価 (F)と人件費(L) のFL(60%)に力を入れることで、店舗運営力を高め繁盛店を作り、FLR構成比率を合計65%にする方法もあります。

どのようなビジネスモデルを組むかでFLRの構成比率の比重は変わりますが、儲かるためにはFLRの合計で65%以下に抑えることが必須というルールは共通です。そして、このFLRが65%程度であれば営業利益率は15%FLRが70%であれば営業利益率は10%それ以上となると利益はほとんど残らなくなると考えるのが一般的です。

営業利益率15%を目指すための考え方

それでは、営業利益率15%を達成するために、どのようなことをしていけばいいのか、売上高、原価 (F)、人件費(L)について、具体的に考えてみましょう。なお家賃(R)については、開業後にコントロールすることは難しいため、開業前の物件選びの際にきちんとFLR比率を計算しておくことが必要です。

売上高の考え方

売上高を改善するためには、1日の売上はいくらなのか(日商)に落とし込んで考えることが必要となります。売上は日商まで落とし込むことで、毎日の店舗運営の業績判断が可能になりますし、目標を立てる際にも日々の店舗運営に紐づくため、具体性が高いものとなります。
また各月の平均日商を比較することで営業日数が多い月と少ない月の比較が可能になりますし、定休日の増減があった場合でも正しい判断が可能になるというメリットもあります。

客単価と客数での管理は必須です!

さらに、日商を客数と客単価にまで落とし込んで考えることが重要です。客数と客単価まで落とし込むことで、売上を実現するために必要な店舗運営の方法(お店のメニュー作りやスタッフの人数など)が見えてきます。

具体的な施策はもう一歩踏み込んで検討を!

客単価と客数をもう一歩踏み込んで分析すると、具体的な施策やその優先順位が見えてきます。例えば、ランチとディナー、平日と休日、夕方と深夜、さらに曜日や天気などで分析を行ってみましょう。
分析によって、弱い部分や改善すべき部分が見えてきたら、例えば以下のようなところから試しに初めてみましょう。
・平日限定のサイドメニュー(ディナー客単価アップ)
・曜日限定の割引(客数アップ)
いろいろ試行錯誤しながら地道に改善していくことが、実は売上高アップへの近道だと言えます。

原価(Food)と原価率の考え方

原価率を管理することは経営の生命線となります。なぜなら、食材やドリンクは家賃などの固定費とは異なり、売上が増える分、一緒に増える変動費だからです。原価率が高くなってしまうと、売上が増えても手元に残る利益は少なくなってしまうという怖い現象が発生します。

原価率が高くなるのは、食材・ドリンクの仕入、調理、販売のどこかの工程に原因があります。どの工程に原因があるのかによって取るべき対策が異なるため、どの工程に原因があるのかを見極める必要があります。

例えば、食材・ドリンクの仕入の工程では、仕入業者の価格が見直され、いつの間にか高くなっていることも原因として考えられます。その場合は、仕入業者を変えることにより原価率を低く抑えることができます。

なお原価率を見る際は、2カ月平均で見ると正しい数値が見えると言われています。特に棚卸を行ってない場合は、必ず2カ月平均で見るようにしましょう。原価率を管理できているお店は2カ月平均で見ると上下の変動は小さくなります。

人件費(Labor)と人件費率の考え方

人件費の管理も原価の管理と同じくらい重要です。多くの場合、人件費率として管理していきます。人件費率は人件費を売上で割った比率なので、売上の好調・不調に大きく左右されます。人件費が高くなってしまわないよう、まずは、シフトを組む際に必要以上に人数を入れ過ぎないようにすることです。

人件費のコントロールは具体性が重要!

経営者が店長や現場のスタッフに人件費のことを伝える場合、「人件費率をあと3%落として」や「人件費をあと15万円下げて」と言っても伝わりません。

現場のスタッフに人件費を管理してもらうためには、「1日あたりのどれくらいの労働時間を削減すればよいか」まで具体的に伝える必要があります。たとえば30日営業で5名体制のお店なら、「現状、目標よりも月間150時間多い。これを1日に置き換えると150÷30日で5時間。さらに、それを5名で割ると、1人あたり1時間多いから、その分労働時間を削減して欲しい」ここまで伝えてあげると、店長は人件費を意識しながらシフトを組むことができるようになります。

このように、人件費の管理には、社員・アルバイトごとに「人件費額」「労働時間(総労働時間と深夜残業時間)」を区別し、どこに問題があるのかを的確に把握した上で適切な対策を打つ必要があります。

「人時売上高」という目線も忘れずに!

このほかにも人件費を分析する上で有効なのが「人時売上高」です。これは、1人のスタッフが1時間あたりにどれだけ売上を上げているのかを表したもので、「その日の売上」÷「その日の全スタッフの総労働時間の合計」で算出できます。

中小規模の飲食店なら、人時売上高はまず4千円台を確保したいところです。「その日の目標売上」÷「目標とする人時売上高」で、その日に使っていいシフト時間の合計を算出することができるので、これもシフトを組む際に有効活用できます。

まとめ

飲食店には様々な業種や業態があり、どこに特徴を出すかはお店によって違います。
しかし、FLR比率を65%以内に抑え、営業利益率15%を確保することは、多くの飲食店にとって有効な目標です。ぜひ、様々な角度からお店を見直し、売上高とFLRを上手にコントロールしていってください。