日本政策金融公庫で創業融資を受けるときには、必ず融資面談が行われます。この融資面談が融資の是非を決めると言っても過言ではなく、必ず成功させる必要があります。
この記事では、公庫担当者がどのような意図をもって融資面談を行っているか、面談時に何を聞きたいと考えているのかを解説し、その後に必ず聞かれる質問とその回答の仕方を、弊社のノウハウを元に徹底解説します。
ぜひ、しっかりとした準備を行い、自信をもって面談に望んでください。
なお、融資面談の多くの部分は、事前に提出した事業計画の内容に沿って行われます。そのため、事業計画の内容が地に足がついて者であり、十分に実現可能なものとなっていることが前提条件となります。
事業計画書の記載内容に自信がない方は、こちらの記事を参考に、一度内容を精査していただくことをお勧めします。
面談時間や服装は?
まず、面談時間ですが、だいたい1時間程度と考えておいてください。事業計画書や提出書類がしっかりとした内容であれば、面談時間は短縮されることもあります。
次に、面談時の服装ですが、基本的にはスーツかビジネスカジュアル(ジャケット・チノパン)が理想です。清潔感のある身だしなみで、丁寧な言葉遣いでの受け答えを心がけましょう。
融資面談は何のために行われるのか、正しく理解しましょう。
具体的な質問例に入る前に、そもそも、融資面談は何のために行われるのか?
公庫担当者の立場になって考えてみましょう。
銀行の担当者と同じように、公庫担当者も、お金を貸すのが仕事です。貸せば貸すほど、自分の評価が上がっていくため、実は積極的に貸したがっています。
しかしながら、しっかりと返済してくれる人でないと貸すことはできないですし、さらに、面談を担当する公庫担当者は、自分一人の裁量だけでは貸し付けを行うことはできず、上司(支店長)や、本部の承認が必要です。
したがって、公庫担当者は、この飲食店が魅力的であり、末永く繁盛し、貸したお金の返済が確実に見込めるということを、あなたに代わって上司に説明する必要があり、そのために自分で多くの書類を作成します。
お店そのものの売上実績や、評判がはっきりしてれば、説明は簡単です。しかし、まだオープン前で実績もない店舗や、今までにないビジネスモデル(業種・業態)を実現しようとする場合、事業計画書や付随資料だけでは判断がつかないのも事実です。
そこで、書面だけでは判断しづらい内容や、自分が上司に説明するのに不足している情報を直接ヒアリングし、整理するために面談が必要になるというわけです。
このことをしっかりと理解しておきましょう。そうすれば、公庫担当者から、厳しい質問や指摘があったとしても、公庫担当者はお店を本気で応援し、上司に対して正しく説明するための準備であり、実は、自分のお店を応援してくれるための必要なプロセスであると理解できるはずです。
日本政策金融公庫の担当者が面談で知りたいことは、たった2つ!
公庫担当者は、あなたの見方であり、上司への説明資料を準備するために面談が行われるということは理解して頂けたはずです。
では、公庫担当者が、融資面談を通じて、どのようなことを知りたいのでしょうか?
実はそんなに多くはありません。結局のところ、公庫担当者が確認したいポイントは、大きく以下の2つに集約されます。
- 代表者はどういう人か?
- 事業の将来性や成長確率が高いものとなっているか?
それぞれについて、順番に解説していきます。
1.代表者はどういう人か?
これは言い換えれば、「お金を貸すだけの信用に足りる人か?」ということです。いくら事業がうまくいく可能性があるからといって、お金を貸す人が経営者にふさわしくなければ、融資は断られます。
公庫担当者は、提出した経歴や信用情報を踏まえて、以下の内容を必ず確認します。
これらの質問に対して適切な回答ができない場合、融資の獲得はかなり厳しくなります。特に、個人の信用情報でNGとなるようであれば、半年~1年ぐらいの時間を掛けて、信用情報や実績を再度作り直し、経験を積みなおすことを視野に入れた方が賢明です。
- 個人の信用情報
- 自己資金の貯め方
- 独立開業までの経歴
これまで、税金や家賃、水道光熱費、クレジットカードの支払いに遅れや滞納が無いか?
給料や報酬から、コツコツと貯めて来ており、その履歴が通帳で記録されているか?
計画的に準備を行ってきており、知識や経験をもった上で、事業をやりたいと思っているか?
もし、ご自身の信用情報に不安がある方は信用情報センターやCICなどで事前に確認しておきましょう。また、事業計画書記載内容以外で説明が必要であれば、詳細な経歴書や、過去の通帳も準備しておきましょう。
2.事業の将来性や成長確率が高いものとなっているか?
これは、「融資が確実に返済されるか?」ということで。ゼロから始めた店舗をしっかりと軌道に乗せることができ、長く継続させられるかということを確認しています。
将来性の確認は、事業計画書に記載されている内容に基づいて行われます。具体的な質問内容や回答の方向性、回答に当たって注意すべきことは後述しますが、しっかりとした準備を行っていることを示すために、金額の根拠となる見積書やデータなどを別途準備しておくことも効果的です。
事業計画書の項目ごとによく聞かれる質問を解説!
ここからは、事業計画書の項目に沿って、よくある質問と、回答の方向性を例示していきます。時間は限られておりますので、すべての項目について質問されることはないですが、どの項目に関する質問が来ても、しっかりと回答できるようにしておきましょう。
1.創業の動機
【質問例】
・なぜ飲食店(業態)を創業したいのか?
・なぜこの場所/立地か?
【回答の方向性】
創業者としての熱い想いと、前向きな理由を話してください。公庫担当者は計画だけでなく”やる気”も見ています。ただし、「飲食が好きだからです」といったやる気のみはダメです。計画を元に具体的に事業が成功する確信がある旨を話してください。
2.経営者の略歴等
【質問例】
・飲食店の経験はどれくらいあるか?
・これまで何か事業をした経験があるか?
【回答の方向性】
これからやりたいお店に活かせる経験を豊富にしていることを、過去の経験からしっかり伝えてください。創業時は実績がない分、代表者の過去の経験は大きな評価材料になります。
3.取扱商品・サービス
【質問例】
・主力となるメニュやお店の売りは何か?
・想定する売上はいくらか、顧客がこなかったらどうするか?
・どのように販促活動(お店を認知してもらう活動)を行うか?
【回答の方向性】
集客に関する取り組みは非常によく聞かれます。計画の内容に沿って具体的に説明するようにしてください。また、付随して自身の携わる業界の現状の環境、競合、将来見通しなどを聞かれる可能性があります。現状の市場環境について、自分なりの意見を用意しておいてください。
4.取引先・取引関係等
【質問例】
・仕入先はどのような業者か?
【回答の方向性】
記載した仕入業者が多くの飲食店で取り扱われている業者であれば、あまり質問されることが少ない項目ですが、特徴のある業者の場合、それ自身が、お店の売りにつながることもあるため、しっかりとアピールしましょう。
5.従業員
【質問例】
・他の役員や共同経営者は代表者とどのような関係か?
【回答の方向性】
代表者及びその親族以外に役員・共同経営者がいる場合、その経歴や関係性を聞かれる可能性があります。共同経営者や出資者がいる場合は、意見や考え方の対立でお店がうまくいかなくなることを心配します。この心配を払拭できるような回答を準備しておく必要があります。
6.お借入の状況
【質問例】
・制度融資(信用保証協会融資)への申込みはしているのか?
・各種ローンの残高とその使用目的は何か?
【回答の方向性】
あまり聞かれることはないですが、制度融資を申し込んでいる場合、その状況や内容を説明してください。また、住宅ローンやカードローンの残高がある場合、どのような返済計画になっているのかを論理的に説明できるようにしておきましょう。
7.必要な資金と調達方法
【質問例】
・初期投資はどのぐらいかかるか?
・設備資金はどのような目的で使用するか?
・開業後の運転資金はどのぐらい必要と考えているか?
・固定収入がなくなるが、生活資金はどうするのか?
【回答の方向性】
事業計画書に基づき、なぜ資金が必要なのかを説明してください。返済の目処が立っていても資金の使い道が明確でないと融資を受けるのは難しくなります。ものによっては中古設備ではなぜダメか、リースではダメかなども説明する必要があります。
また、開業により現在の仕事を退職し定期収入がゼロとなってしまうときは、生活するための資金をどのように捻出するかについても説明してください。記載している自己資金の中に生活資金が入っていない旨が説明できれば大丈夫です。
8.事業の見通し(月平均)
【質問例】
・想定される月の売上や経費はいくらか?
・創業当初からなぜ利益が出せるのか?
・今期、来期の目標を教えてください。
【回答の方向性】
事業計画書と整合性のとれる内容で説明してください。概算でも構いませんので2期目3期目くらいまでの展開も用意しておくとよいでしょう。
特に、お店が軌道にのるまで開業3ヶ月間は、資金繰りについて注意している旨を伝えてください。売上を少なめに見積もった上でも資金繰りに問題がないこと、余計な経費をできるだけ使わないよう気を付けていく旨も伝えてください。
融資面談で落ちる可能性が高まるNGワード
これを言ったら絶対に落ちるという言葉はありません。また、事業計画書、面談、その他を総合的に判断し、審査を行いますので、面談だけで判断されるわけではないですが、以下のような内容は大きなマイナス評価を受けてしまいますので、発言しないよう心掛けてください。
NGワード①「いくらなら借りれますか?」
創業融資に限らず、資金調達において大切なことは、何に使うか?どのように返済するか?をはっきりさせることです。
なので、「いくらなら借りれますか?」と聞くことはやめておきましょう。これは使い道が明確になっていないが、とにかく手元にお金が欲しいと言っていることと同じことです。貸したお金が何に使われるかわからないというのは、金融機関が一番嫌がることです。
NGワード②「根拠はわかりません」
「妻が書いたので・・・」「コンサルタントに頼んだので・・・」という理由でもふさわしくありません。その場に同席していない第3者と共同で作成した内容であっても、ご自身でしっかりと説明ができるようにしてください。
そうしないと、書類に書いてあることが説明できないということは、記載内容に信ぴょう性がないと判断されてしまいます。その結果、計画性が無く、期待通りの売上は見込めないのではというマイナスの印象を与えてしまいます。もし、少し変わった質問があっても、あせらなくて結構ですので、自然体で丁寧に応えましょう。
まとめ
なぜ融資面談が行われるのか、そして、どのようなことが質問されるのかを解説してきました。
まとめると、面談で大切なことは、事業計画書の内容にそって、明確な根拠を元に、堂々と、自分の言葉で話すことです。
最後に、自分がお金を貸すときに、どういう人であれば貸しても良いか、どういう人には貸したくないか、を想像してみてください。そして、お金を貸しても大丈夫だと思われるように、しっかりとした準備をして、融資面談を乗り越えましょう。